ポスト・ディスコ(英:Post-disco)は、1970年代前半から1980年代初頭まで流行したディスコ音楽の流行が去った後、ダンスに関する暗中模索を行っていた時代の音楽である。

音楽の傾向は、DJやプロデューサーによって、ダンス・ポップやブギー、イタロ・ディスコに象徴されるように、より電子化され、実験的なものだった。テクノとハウスはポスト・ディスコから定着した。

ディスコ音楽からは、シンセサイザーで作られるダンス系の音楽ジャンルのほとんどすべてが派生して行ったが、まさにその派生の最初期にあたる音楽ジャンルである。

歴史

ジョルジオ・モロダーとピート・ベロッテのコンビがシンセサイザーのみでバックトラックを制作したディスコ音楽である、ドナ・サマーの「I Feel Love」が早くも1977年に発売されると、ブライアン・イーノが「このシングルはこの先15年のクラブ・ミュージックのサウンドを変えることになるだろう」とコメントした。電子音楽界の巨匠による証言と音楽的特徴を考慮すると、「I Feel Love」はポスト・ディスコと、そのジャンルから更に派生したHi-NRGの前史に当たると言える。1977年当時には、シンセサイザーによってポピュラー化されたミニマル・ミュージックの領域では、アシュ・ラ・テンペルやクラフトワークが活動しているのみであった事実を考えれば、音楽シーン全体からしても非常に画期的なリリースであった。

ディスコ・デモリッション・ナイト以降、ディスコ・ミュージックはラジオ局でのエアプレイが減少し、代わってブラック・コンテンポラリー、AOR、トップ40もの、ヘヴィメタル、産業ロックなどが流されるようになった。ディスコ・ミュージックの主流レーベルだったカサブランカ・レコード、TKレコード、RSOレコードは経営難に陥っていく。しかし、Hi-NRG、イタロ・ディスコ、ブギー、ユーロビート、テクノポップといった新しいスタイルに分かれながら、ディスコ・ミュージックは生き残っていった。

マイケル・ジャクソンのアルバム『オフ・ザ・ウォール』(プロデューサー:クインシー・ジョーンズ)は、R&Bやダンス・ミュージックを制作する一部のプロデューサーに影響を与えた。ファンク・バンドのパーラメント-ファンカデリックは、1970年代と1980年代に多くのポスト・ディスコとポスト・パンクの音楽を制作した。

起源

「ポスト・ディスコ」という言葉は、生演奏のエレクトリック・ベース、ドラムスがないディスコ・ミュージックを定義するために、1984年に『ケイデンス・マガジン』が初めて使用した。「ポスト・ディスコ」は、ディスコ・ミュージックの終わりからハウス・ミュージックの出現の間の時代の音楽ジャンルをオールミュージックが表現するときに使用される。

チャート

ポスト・ディスコ時代に成功したレコードたち(大半はR&B、ポップ指向)

ポスト・ディスコ・リバイバル

2000年代にハウス・ミュージック・グループのダフト・パンクは、1980年代のポスト・ディスコ風アルバム『ディスカバリー』(2001年)を発表した。他のハウス・アーティストであるレ・リズム・ディジタルは1980年代のポスト・ディスコに影響された。カナダの音楽グループであるクローメオは、1980年代調のブギー・アルバム『She's in Control』で2004年にデビューした。『The Perfect Beats』シリーズ (Vol. 1-4) は、様々なアーティスト(イマジネーション、レベル42、アフリカ・バンバータなど)によるポスト・ディスコのコンピレーション・アルバムである

特徴

ディスコ・ミュージックとは異なり、ポスト・ディスコは通常ハイハットによるビートやエレクトリック・ベースによるウォーキング・ベース、ストリングスはなく、ドラムマシン、シンセサイザー、シーケンサーによる4/4拍子を特徴としている。ソウルフルな歌声は、この新しい音楽に留まった。ポスト・ディスコはアンダーグラウンド・ミュージックというわけではなく、マドンナ、ニュー・オーダー、ペット・ショップ・ボーイズなどのディスコ・ミュージックに対する新しい解釈によるキャリアである。

演奏者

ラリー・レヴァンは、アンダーグラウンドな彼自身のグループであるピーチ・ボーイズを含む、様々なポスト・ディスコ・アーティストをプロデュース・リミックスする際に、ダブの技術を使う。シナモンの「Thanks To You」、D・トレインの「You're the One for Me」、ピーチ・ボーイズの「Don't Make Me Wait」といったポスト・ディスコの曲達は、これまでにない新しい音楽スタイル(ハウス・ミュージック)だった。

DJ、ミキサー、プロデューサーとして新しい音楽を創造した音楽家は、例えばアーサー・ベイカー、ラリー・レヴァン、フランキー・ナックルズ、シェップ・ペティボーン、カシーフなどである。

ポスト・ディスコに続いたポップ・ロック、電子音楽、R&Bのミュージシャンは、例えばテレックス、D・トレイン、ザ・システム、シャロン・レッド、Musique、ゲイル・アダムス、パトリース・ラッシェン、エムトゥーメイ、オーラ、スカイ、インナー・ライフ、ラファエル・キャメロン、エドウィン・バードソング、アンリミテッド・タッチ、カーティス・ブロウ、ウォズ (ノット・ウォズ)、リキッド・リキッド、イマジネーション、ボビー・O、シャノン、タイメックス・ソーシャル・クラブ、S.O.S.バンド、シャラマー、レイクサイド、ミッドナイト・スター、ウィスパーズ、インスタント・ファンクなどである。

ポスト・ディスコのアルバムには、マイケル・ジャクソンの『スリラー』(1982年)、パトリース・ラッシェンの『ハート泥棒』(1982年)、マドンナの『バーニング・アップ』(1983年)などがある。

残した影響

1980年代のポスト・ディスコ・サウンドは多くのノルウェーのダンス・ミュージックのプロデューサーに影響を与えた。アイス・キューブやEPMDなどの一部のラッパーは、ザップやキャメオのような彼らがお気に入りのポスト・ディスコ・ファンク・サウンドにラップを重ねた。ショーン・パフィ・コムズは、ポスト・ディスコ・R&Bに間接的に影響を受けた。

レコード・レーベル

  • SAM Records (英語)
  • Preludeレコード (英語)
  • West End Records (英語)
  • Radar Records (英語)
  • Emergency Records (英語)
  • Salsoul Records (英語)
  • Enjoy Records
  • Sugar Hill Records (英語)
  • SOLAR Records (英語)
  • Tommy Boy Records (英語)

関連項目

  • ファンク
  • R&B
  • ソウル・ミュージック
  • ハウス・ミュージック
  • ガラージュ

脚注


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